新出生前診断ってどうなの??
先日 不妊鍼灸の患者さんで陽性が出て順調に経過をたどり、もうすぐ病院を卒業という方から「やっぱり出生前診断は受けた方が良いのでしょうか?」と聞かれました。
最近この相談を受けるケースは非常に増えてきています。
病院で不妊の治療をしている最中は「とにかく赤ちゃんに会いたい」という思いのみが強いと思いますが、いざ陽性判定が出て落ち着いてくると次は「高齢出産になるけど赤ちゃんは大丈夫なのだろうか・・」という不安が出てくるようです。
かくいう私も妻が36歳、39歳の時に出産していますのでその心境は良くわかります。
妻が上の娘を妊娠中にある友人(女性)と会って話す機会がありました。
彼女は35歳で出来ちゃった結婚し、イギリス人のご主人とイギリスで生活を始めていましたが、できちゃった結婚だった故様々な手続き等で身重ながら実家のある浜松にわずかの間帰省していたのです。
歳を遅くしてから留学した先でのまさかのできちゃった結婚報告に驚いたばかりでしたが
その当時35歳の彼女は妊娠が発覚してから羊水検査をしたと言いました。
「だって35歳だから心配じゃん」とあっけらかんと言ったのでイギリスでは当たり前なのかな~と思ったものです。
海外では高齢出産に際し「一般的な検査」である所もあるようです。
羊水検査は妊娠した子宮に長い針を刺し羊水を吸引し、羊水の中にある細胞が染色体異常を起こしているかを調べる検査のため検査自体にもリスクがあり0.3%ほど流産の可能性があるのです。
しかし2013年に日本でも新出生前診断(NIPT)が認可され羊水検査より安全に検査を受けられるようになり関心が高まっています。
血液検査でダウン症が99.1%検出出来ると話題になりました。
現在不妊治療を行う年齢の方は高齢出産と言われる年齢の方が多いためこの悩みに行き当たるのは当然の事かも知れません。
新出生前診断(正式名称・無侵襲的出生前遺伝学的検査)は羊水検査や絨毛検査などに比べて採血検査で胎児の染色体異常を調べられるので母体への負担を大幅に軽減することのできるのがメリットです。
羊水検査は子宮に針を指す為「侵略的」で新しい検査は血液を採取するだけなの「非侵略的」となのでしょう。
ダウン症が99.1%検出出来ると聞くとかぎりになく100%近くわかるとイメージしてしまいますが実はちょっと違うので注意が必要なのです。
この新型出生前診断は「感度99.1%」とされています。
感度とは胎児がダウン症であった場合に検査で陽性と出る確率が99.1%という意味です。
もう一つこの検査の「特異度が99.8%」ともされています。
特異度とはダウン症でなかった場合に検査で陰性と出る確率が99.8%と言う意味です。
35歳以上の妊婦さんの約0.3%がダウン症の胎児を妊娠するとされています。
これを踏まえてこの検査の実際の確率をみていきます。
①35歳以上の妊婦さんがダウン症を妊娠する確率が0.3%、10,000人の胎児のうち30人、ダウン症でない胎児が9,970人
②ダウン症の胎児で検査が陽性になる確立が99.1%、30人中27.3人が陽性で陰性に出てしまうのは0.3人
③ダウン症でない胎児が検査で陰性になるのは99.9%、9960人、陽性に出てしまうのは10人です。
この検査で「陽性になる人」は29.7人+10人
でも、本当に陽性の人は29.7人なので、29.7÷39.7≒74.8%となります。
検査で陽性と出た場合に実際に胎児がダウン症である確率は実は74.8%なのです。しかもダウン症なのに陰性と出る場合もあるという事です。
75%と言われるとイメージ的にはかなり精度は低いと感じてしまいますね、少なくとも100%に限りなく近い99.1%とは全く印象が違います。
4月25日の毎日新聞に、この検査の陽性反応の方の96%が中絶という記事が出ました。
陽性と出た人が100人いても25人は実際は陽性ではない、にも関わらず96人は陽性の判定が出たら中絶してしまうと言う事です。
なんとも言えない結果ですが、ここは複雑な命の選択という問題です。
ちなみに浜松には検査してもらえる病院はありませんので一番近くで名古屋まで行かないといけません。
当院の患者さんに質問された際は以上の説明をさせて頂いています、そして検査をする場合にもし陽性になった場合も考えてからする事をお願いしています。
本来35歳以上でダウン症の確率は0.3%です。
「雨の予報が降水確率0.3%だった時に用心に傘を用意しますか?」
これは日本不妊カウンセリング学会の先生の言葉です・・。
コメントを残す